茶の本

 

茶の本 (岩波文庫)

茶の本 (岩波文庫)

 

 岡倉天心の「茶の本」を読んだ。茶道が道教・禅道に通じ、東洋的な審美観をもとに形作られたことを述べている。また、西洋文化に見下されている東洋文化の価値を復興しようとする気概がうかがえる。当時は戦後間もないということもあって、日本文化に対する蔑みが強かったのだろうか。

 茶室にみられるような美は、現在の日本の建築様式からは抜け落ちてしまった。おそらくコストに対する利便性が、西洋建築様式には及ばなかったからなのだろう。しかしながら、茶室のような東洋美は、間違いなく文化として保全されるべき価値のあるものである。よって、前のマイケル・サンデルの話ではないが、市場原理だけでは測れない美の規範があることがここにも見て取れる。